IKE/ON HIGHER DREAMS [NRJ-0873]

現代UKジャズがエジプトへと南下、エレクトロニカ~ダブを経由した新たなサウンドがここに誕生!

Wah Wah 45sからの新作はイギリスのギタリスト/コンポーザーであるIKEことアイザック・デ・マーティンのデビューアルバム。彼は音楽家の家庭に生まれ、クラシックギターを学び、ジャズの学位を取得。ライブやコラボレーションを通じて独自のスタイルを徐々に確立していった。

転機となったのはパンデミックだ。IKEはかねてから興味を抱いていたというエジプトに渡り、カイロのヘリオポリス大学で教鞭を取りながら、LP『On Higher Dreams』を製作するためのイマジネーションを涵養していた。彼はエジプトの日常における音楽の普遍性にしばしば驚かされた。エジプトの大学では、例えば、大学の教授会はしばしばライブコンサートで始まり、その後の議論に適切な雰囲気と環境を整える装置として機能していた。IKEはこのような場で演奏するよう勧められ、音楽に対するアプローチとそれを支える哲学に大きな影響を受けたという。

ヨーロッパに戻ったIKEは約一年かけてエジプトでの経験を消化。オールアナログの録音機材により60~70年代の温かみのある音像を実現しつつ、現代のシンセにも馴染むようなプロダクションを実現させた。「Nilo」ではエジプトの生命線であるナイル川を、「Sidda」ではエチオピアのタナ湖にあるその源流までの青ナイル川の旅をナビゲートし、エチオピアの伝統音楽に敬意を表している。「Risorgini」はイタリアの映画音楽化であるジュリアーノ・ソルジーニへオマージュを捧げ、実験的要素とアフロ要素を融合した独特のアプローチを表現している。

エズラ・コレクティブやココロコ、さらにはシャバカといった現代UKジャズと中南米~アフリカの音楽が混ざり合う潮流とも共振しつつ、まろやかなビンテージサウンドを採用することによってレアグルーヴ感さえ漂うアルバムに仕上がった。ジャズファンのみならず辺境マニアも唸らせる洒脱な一枚だ、今年要注目!

1.SIDDA
2.Nilo
3.Clay
4.Risorgini
5.Eventide
6.Interlude
7.Rapids (Feat. Danny Kuttner)
8.Crepusculo
9.L'Accendino